アメリカの防災が自助に長けていたように、国によって防災には特徴があります。
このページでは、
キューバ、ニュージーランド、イタリア、そしてメキシコの防災事情を見ていきましょう。
キューバの防災
キューバは「防災大国」とも呼ばれ、海外からもお手本にされるほどです。
公助に優れており、いざというときには国が十分に物資を提供できる体制が整っています。
そのおかけで国民は国に対し厚い信頼を寄せています。

社会主義国であるキューバは、医療や教育に関する費用がかかりません。
医療レベルも高く、災害時であっても普段と同じ質の医療を提供することができます。
国の財政は豊かであるとは言えませんが、福祉や防災に財源を優先的に投資しています。
そのおかげで災害時にも避難所には食料や日用品がたっぷりと提供されます。
日本では支給が少ない、妊婦用やペット用、
介助が必要な高齢者や障害を持つ人たちへのケアも充実しているのです。
2005年のハリケーン「カトリーナ」はアメリカで1000人以上の死者を出しましたが、
その後勢力を強めて上陸したはずのキューバでの死者は0人でした。
この結果が、キューバの防災大国としてのレベルの高さを表しています。
街自体は被害を受けましたが、国による早めの避難指示に対して国民が忠実に従ったために、
何より大切な人命は守られたのです。
国からの手厚い支援があるので、避難をためらう必要もないわけです。
まさにこのキューバの防災は、国と住民との信頼関係の賜物といえるでしょう。
イタリアの防災
イタリアは公助と共助が上手く機能しています。

アルプス・ヒマラヤ造山帯に含まれるイタリアは、日本と同じく地震の多い国です。
キューバ同様、災害対応に優れていると言われる理由は、市民保護局という組織にあります。
市民保護局は、死者2000人を超えたイルピニア地震(1980)をきっかけに作られた災害対応組織で、
公務員とボランティア団体で構成されています。
日頃の防災訓練から、人命救助や被災者対応までの全てを担うため、
災害に対して迅速に対応することが可能です。
災害が発生してから35分以内に対策会議を開くこと、48時間以内に避難所を用意することが
法律でしっかりと定められています。
避難所は簡易ベッドが一般的で、家族毎にテントが提供されるので
避難時にもプライバシーが守られた空間で過ごすことができます。
エアコン完備で、車椅子にも対応できるようにスロープが備えられたテントもあります。
その他のボランティアの活動にも特徴がみられます。
「職能支援者」という、自分の職業を活かしたボランティアの人たちが、被災地で活動してくれます。
例えば、調理士が食事を用意してくれたり、ドライバーがトラックで物資を運搬してくれるのです。
彼らは国に登録されており、事前に訓練を受けています。
ボランティアと言っても最大7日間の給与が保障されており、交通費も支給されることになっているので、
自身の生活が守られた状態で安心して被災地に出向けるのです。
イタリアでは住民が助け合いやすい環境が、国によって用意されていることがわかります。
公助だけではフォローしきれない部分は、あらかじめ共助でまかなうと決めているので、
災害時にスピード感のある対応が可能となっているのです。
メキシコの防災

メキシコは共助が当たり前の国です。
国民のほとんどがカトリックを信仰しているという宗教的背景から、
隣近所の人を大切する精神を持つ人が多いと言われています。
また、他の先進国と比べると、公助の力が十分とは言えず、対政府よりも住民同士の信頼が強いのです。
実際いざというときには、公の支援を受けられるまで時間を要することも。
そんなとき、一番近くにいる顔馴染みの人たちと協力して助け合える共助の力はとても心強いでしょう。
ニュージーランドの防災
ニュージーランドは災害後の対応に力を入れているのが特徴です。
日本と同じく環太平洋造山帯に属した島国で、火山噴火や大地震にも度々見舞われることで知られています。
海や山々に囲まれ、自然豊かな国ですが、言い換えれば自然災害とは常に隣り合わせだといえます。

しかし、ニュージーランドの人々は、その自然のありのままを受け入れており、
日々の防災意識というものはそこまで高くはありません。
代わりに、被災した時のフォロー体制が充実しており、
事故補償法という法律で、被災者に対して給付を行っています。
この法律は、災害だけでなく交通事故や業務中の事故などにも幅広く適応されます。
被害に遭った人が素早く元の暮らしを取り戻せるように、
防災というよりも復興に対してより力を入れて取り組んでいるというわけなのです。
日本に住む私たちも、豊かな自然の恵みのおかげで暮らしを営んでいる一方で、
ときにその豊かな自然から猛威を振われるという事実を常に受け入れておかなければなりません。
さて、今回のLesson4では国によって防災にも特色があることを学びました。
地形や気候だけでなく、宗教や自然に対する価値観など、国民の心理も防災によく現れているのですね。
外国の対策を学ぶことで、得るものも多くあったのではないでしょうか。
他の国の良い点を活かしつつ、日本は日本ならではの防災を作りあげていかなければなりません。
次のセクションからは、防災の詳しい知識をより具体的に身につけていきましょう。