アメリカの防災教育
アメリカの自衛の精神は単なる国民性によるものだけではありません。
幼い頃から自分の身を守る大切さをしっかりと学んでいるから備わっているのです。

アメリカでの防災教育は、自分で考えて行動することができるよう組み立てられています。
例えば、子どもたちに向けた火災のための防災教育に積極的に取り組んでおり、
次のような代表的なプログラムがあります。
Stop Drop and Roll
日常生活の中で、万が一自分に火がついてしまった時の消火方法です。
まずは止まって、それから地面に倒れ込み、左右に転がりましょう、という内容です。
慌てて走ったり、消火のための水を取りに急ぐと、かえって火を大きくしてしまう可能性があります。
この手順のとおり、まずは止まって消火することの大切さを伝えています。
Great Escape

1960年代に公開された、邦題「大脱走」という映画から名付けられた訓練です。
火災に遭った時に、煙を吸い込むことなく逃げ切る方法を学びます。
煙を出す機械を使用し、次のような流れで火災状況を疑似体験しながら行います。
- 警報の音から火災の発生を判断
- ドアはすぐに開けず、手の甲で温度を確認し、ドアの外に炎が迫っていないかを確認
- 熱くないドアから部屋の外へ出たら、低姿勢で綺麗な空気の中を逃げる
子どもたちは、火事が発生した時には決して煙を吸ってはいけないということを、
この訓練で身をもって学習するのです。
プログラムでは、「じゃあどうしたらいい?」と子どもに問いかけをし、子供達自身に答えを考えさせながら進められます。
ドアが一つしかない、もしくはすべてのドアが熱ければ、窓を探すように指導します。
シーツでドアの隙間を埋めて煙の侵入を防ぐこと、別のシーツを窓から垂らして助けを求める方法を教えます。
もしも自分がドアも窓も無い部屋にいるとしたら、シーツに包まって煙を吸わないように身を守ること。
そして壁や床をドンドン鳴らして助けを呼ぶという術も教えられます。
火災の時に大声で助けを求めると、煙を吸いやすくなり危険だ、ということも実体験を基に習得していくのです。
Learn not to burn
米国防火協会(NFPA)が作った、火傷防止を目的とした防災プログラムです。
未就学児~小学校低学年までを対象に、年齢別に作られています。
アメリカでは子どもの火遊びの問題が長年深刻であるという実情があります。
映像や音楽を取り入れ、授業の一環として子どもたちが体を動かして取り組める活動も盛り込まれ、
楽しみながら学べる内容となっています。
Risk watch

同じくNFPAが作ったプログラムです。
このプログラムでは、何かトラブルが起こった時に、まず冷静になることを一番に伝えています。
冷静になって、自分の置かれている状況を考え、
これまで述べてきたような具体的な対応を使って、その危機を脱しましょうという内容です。
どのプログラムも、子どもたちが自力で考え、
一人で行動できるようになるために大切なことが盛り込まれています。
それだけでなく、子どもたちが面白いと感じながら取り組むことができるようになっているのが
さらに魅力的であると言えるでしょう。
日本では、学校で過ごしている時に地震や火災が起きた場合の「避難の仕方」の練習が一般的で、
先生方に引率されて静かに校庭へ避難した思い出があるのではないでしょうか。
対照的に、アメリカでは「自分の命の守り方」を、よりリアルなシチュエーションで体験しながら具体的に学習させているのです。
そうして、いざというときに主体性を持って行動できる子どもは、
大人になると、周りの人をも助けることができる人へ成長するかもしれません。
これは本人にとってもまさに財産だと言えます。
このようなアメリカのやり方のいい点を、ぜひ日本にも取り入れていきたいものです。
続いては、さらに他の国の防災について解説していきます。