アメリカの防災
毎年災害が発生しているにも関わらず、日本の防災にはまだまだ課題が山積みです。
海外ではどのように防災に取り組んでいるのか見ていきましょう。

自助の国アメリカ
アメリカでは、自分の身を自分で守るという文化が浸透しています。
銃社会である点もこれと深く関係していると言えます。

アメリカは環太平洋造山帯に属し、火山や地震のある国というところでは日本と共通していますが、
災害時の考え方は日本人と真逆なところがあり、自助の意識がとても高くあると言えます。
災害時に逃げろと言われても「自分は大丈夫だ」と逃げない日本人とは真逆の意識が根付いているのです。
東西に広がる地形を持つため、エリアにより気候が大きく変わるアメリカ。
乾燥しやすいカリフォルニア州やアリゾナ州の位置する西部では、大規模な森林火災も多く発生します。
フロリダ州などの南部は、ハリケーンが多く上陸する地域です。
このような災害は日本では珍しいものなので、災害の種類も大きく異なるということが言えるでしょう。
ハリケーンの猛威
2017年にはハリケーンによって甚大な被害が発生しました。
同年8月、まずハリケーン「ハービー」がテキサス州を襲い、琵琶湖4個分に相当する雨を降らせました。
年間降水量にも匹敵する豪雨は、大洪水を引き起こしました。
このときに、8月の温かい気温と洪水という条件が相まってハリケーンの勢力を巨大化させてしまう、
ブラウン・オーシャンという現象が起きました。
そしてその2週間後にも、巨大ハリケーン「イルマ」がフロリダを襲ったのです。
この時約380万人に対して避難命令が出されましたが、
実際にはそれをはるかに上回る約650万人が避難したそうです。
この事例を見るとわかるように、アメリカの人々には
危険を感じたら逃げるという感覚が多くの人々に備わっている、といえるでしょう。
これが自助の意識なのです。
シェイクアウト
アメリカと日本では避難訓練にも違いがあるのでしょうか。

地震のための避難訓練として、2008年にカリフォルニア州でシェイクアウトが誕生しました。
これは、地震発生時に慌てず冷静に自分の身を守る行動できるように、
日頃の訓練が必要だ、という考えのもとに始まった訓練です。
シェイクアウトで提唱されているのは、次の3つの安全行動です。
- Drop:その場で姿勢を低くする
- Cover:頭や首を落下物から守る
- Hold on:揺れが収まるまで動かない
とてもシンプルで、誰にとってもわかりやすく覚えやすいものとなっています。
シェイクアウトは実施日が決まっており、誰でもどこでも参加できます。
参加者には事前学習の機会が与えられます。
学んだ上で、会社や学校、自宅など、実施日にそれぞれが過ごす場所で訓練に参加します。
地震発生の通知が届いたら、その場で3つの安全行動を1分間行い、
事後の振り返りまでをするというのが訓練の内容です。
元々は一部地域で始まったものですが、SNSを通じて拡散され、
今では地震訓練としては世界で最も大きい規模となっています。
日本でもシェウクアウトを取り入れている企業や教育機関が増えてきています。
自らの意思を持って参加する訓練は、強制された訓練よりも何倍も学びを得られるでしょう。
このようにアメリカでは、防災の主体性を引き出す訓練が、日頃から行われているのです。
アメリカの防災は、まず第一に自分を守るという自助の意識が強い点が特徴だと言えます。
この点では、日本と比較すると意識の違いが大きくあると言えるでしょう。
実はアメリカは、幼い子どもたちにも積極的に防災について学ぶ機会があります。
次のページで詳しく見ていきましょう。