高齢者だからこその備えとは
長寿の国、日本。

平均寿命は更新を続け、2019年の厚生労働省による調査では、女性は87.45歳、男性は81.41歳。
女性は世界2位、男性は3位という結果です。
医療の発展や国民の健康意識の向上が評価される一方で、
「老老介護」「認認介護」といった言葉にも表されるように、大きな問題も抱えています。
このような社会で災害が起きたときのために、どのような備えが必要でしょうか。
身近にいる高齢者や、自分自身が歳を重ねたときをイメージしながら考えていきましょう。
超高齢化社会と災害
全人口の約3割が65歳ということは、
災害時に被害を受けた人のうちの高齢者の割合も必然的に高くなります。
1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災では、
死者・行方不明者の約6割が60歳以上の方々でした。
2018年の西日本豪雨では、60歳以上の割合は約7割でした。
現在では65歳以上が全人口の約29%を占めるほどの超高齢化社会といわれています。
しかし、出生率は低下の一途をたどり、少子高齢化が進む日本。
他国では前例のない状況での防災を、一人ひとりが考えていくことが必要とされています。
高齢者の避難の注意点
足腰が弱ってしまった高齢者が効率良く避難するポイントは、
早めに動き始めること。
市町村から発令される避難情報には警戒レベルの段階があります。
令和3年5月20日以降、警戒レベル4の避難勧告は廃止され、避難指示へ改正されました。これにより警戒レベル4で全員避難しなければなりません。
- 災害への心構えを高める必要あり
- 避難行動の確認
- 避難準備・高齢者等避難開始
- 避難指示
- 緊急安全確保
高齢者の避難のタイミングは警戒レベル3です。
避難に時間がかかる人とその支援者は避難すべきとされており、
気象庁が発令する大雨警報や洪水警報はこのレベルに相当します。
なるべく明るい昼間のうちに避難しましょう。
夜は無理せず、安全を確保して潔く翌朝を待つ判断も大切です。
配慮が必要な高齢者の避難

要介護者の場合は、福祉避難所へ向かう選択肢もあります。
これには、特別支援学校や幼稚園が指定されており、介護が必要な人が利用することが可能です。
近くの福祉避難所を調べておきましょう。
また、避難行動要支援者名簿に登録すれば、災害時に自治体から避難支援を受けることが可能です。
認定には申請が必要です。
災害時にはヘルパーの方に来てもらうことが難しくなります。
いなくても対応できるように備えておきましょう。
施設で介護を受けている家族がいる場合は、
緊急時の連絡先や、対応について確認しておくようにしましょう。
高齢者の非常用持ち出し袋は
災害が起きた時に、すぐに手に取る非常用持ち出し袋には、
次のものを入れておくのが良いでしょう。
- ヘルメット
- 携帯ラジオ
- 老眼鏡
- 軍手
- 雨具
- 非常食
- 杖
- 入れ歯のスペア
- 着替え
高齢者は温度調節機能が徐々に低下してきます。
定期的に備えを見直して、着替えは季節に合わせて用意することが重要です。
普段から日常でも災害時でも役立つ、以下のようなものを持ち歩くようにしましょう。
- 食品(ペットボトルやお菓子)
- 衛生用品(マスク、ティッシュ、除菌グッズ)
- 薬
- 身分証、家族の写真
- 携帯電話、充電器
- 笛
- 携帯用簡易トイレ
衛生用品は健康状態を保つのに重要です。

普段から薬を服用している人は、多めに持っておいたほうが安心です。
持病がない人でも絆創膏や常備薬があれば良いでしょう。
お薬手帳を持っていることで、被災時でもいつもの薬を処方してもらえたという例もあります。
また、災害時に大声で救助を呼ぶのはとても体力を使います。
防災用の笛は、首からかけるタイプや鞄に付けられるものもあるので、
かさばらずに携帯することができます。
荷物はなるべく軽量でなければ、避難の妨げになってしまいます。
どちらも重くなりすぎないよう、自分にとっての必需品は何なのか、見極めることが大切です。
災害時の高齢者の課題と対策
「今まで大きな災害に遭ったことがない」
「今回も大丈夫」
そんな根拠のない自信から避難せず危険な目に遭うことに…。
報道を見た遠くで暮らす家族からの連絡で、急いで避難したという事例も。
これは正常性バイアスといって、
人には、異常事態が起こっても平常心を保とうとする心の働きがあります。
バイアスとは偏見という意味です。
「大丈夫」と前向きな気持ちを持つことは大切ですが、間違った先入観は危険です。
冷静な判断を忘れないようにしましょう。
また、高齢者の中には一人暮らしの人も多くいます。
いざというときに周りに頼る人がいないのは心細いですね。
日頃からご近所付き合いを心がけておきましょう。
挨拶をすること、趣味やボランティアをきっかけに仲間を作るのも良いでしょう。
お店の常連になって、店員の方と関係を築くこともできます。
こうした日常のお付き合いは、非常事態での支えになるのです。
続いては、災害時における高齢者と健康にスポットを当ててみましょう。