災害直接死と災害関連死
災害によって亡くなられた人の原因は、災害直接死と災害関連死に分けられます。
災害直接死とは、建物や家具の倒壊や津波など、
災害が直接的に原因となった死を指します。
災害関連死とは、災害が心身の健康に悪影響を与え、
間接的に原因となった死を指します。
避難したその後の生活の中で、高齢者が特に注意すべき点をみていきましょう。
高齢者は災害関連死に注意
高齢者は災害関連死の割合が非常に高いのです。

災害関連死には以下のようなものが当てはまります。
- エコノミークラス症候群
- 持病の悪化
- 自殺
- ストレス・過労
- 脱水
- 感染症
- 停電による熱中症
- 過度な不安やショックによる急性心筋梗塞
とっさの出来事で命を落としたのではなく、
生き抜いた命がその後の避難生活の間に失われてしまっているということです。
加齢により体力や代謝が低下してしまっていると、些細な体調不良から重篤化してしまうのです。
だからこそ、シニア世代にとっては、避難するための備えに加えて、
避難生活を続けていくための備えと知識がとても重要であると言えます。
エコノミークラス症候群を予防しよう
避難生活の特徴として、体を動かす機会が減ってしまうことが挙げられます。
同じ姿勢を長時間続けると、血行が悪くなり体の不調を引き起こします。
血栓ができてしまうと、最悪の場合死に至ることも。
2016年に発生した熊本地震での災害関連死による死者はおよそ200人。
そのうちエコノミークラス症候群(急性肺血栓塞栓症)が原因とされる人は50人以上にのぼります。
では、避難生活のなかでエコノミークラス症候群を予防するには、どのような対策ができるでしょうか。
- 正しく水分補給をする
- 締め付ける服装はやめる
- 足の位置を上げて寝る
- ストレッチをする
などが挙げられます。
脚がむくんだり、腫れて痛みを伴うような場合は注意が必要です。
立ち上がって動き出した時に、激しい息切れや動悸、体に痛みが出る場合は、
速やかに医療機関を受診しましょう。
足のストレッチで血行促進
避難所でもその場でできる体操があります。
下記は椅子に座った状態で行える体操です。
足を動かして血流を促進させ、体を温めましょう。

- 足の指を閉じて開く、を繰り返す
- つま先を床につけ、かかとを上下させる
- かかとを床につけ、つま先を引き上げて下ろす
- 片方の膝を両手で抱え、膝から下の力を抜いて足首を回す
- 反対側も同様に
寝た状態で手足を上にあげ、ブラブラと揺らすだけでも血流促進に効果的です。
浮腫んだ部分を心臓よりも高い位置にすることがポイントです。
脱水を予防しよう
災害関連死の原因を調べていくと、元々は脱水であることが多いことがわかります。
断水により飲み水の確保が難しい状況であることに加え、
食事も満足に摂れなくなるため、普段食べ物から得られていた水分も不足してしまいます。
さらに高齢者の場合、元々喉の渇きに鈍感になってしまっていることも脱水に陥りやすい一因です。
こうして知らず知らずのうちに脱水が進行し、突然立ち上がれなくなってしまったり、
その他の体調不良を引き起こすのです。

脱水時は体にどのような変化が起こるのでしょうか。
水分を摂らないでいると、体内の水分量と塩分が減ってしまいます。
そうすると脱水状態になるのですが、恐ろしいのはここからです。
水分を補おうと真水だけを摂取するのは危険です。
体に必要な体液(血液・リンパ液・消化液など)の濃度が薄くなってしまいます。
これらの体液は、取り込んだ酸素や栄養を各臓器へ届ける役割を担っています。
脱水になると、この働きが正常に行われなくなってしまうのです。
そのため体は体液の濃度を元に戻そうと水分を排出しようとします。
するとまた体内の水分が減少し、脱水を進行させてしまいます。
65歳以上なら、以下の症状に当てはまると脱水が始まっているかもしれません。
- 皮膚の乾燥
- 口の中がネバネバする
- 手の甲などをつまみ上げると跡がなかなか消えない
- 便秘が酷くなる
効果的な水分補給を
高齢者の場合、体重1kgあたり40mlの水分が1日に必要だと言われています。
食事から摂取する水分を除いても、1〜1.5リットル飲むことが望ましいです。
1日のどこかで大量に飲むのではなく、小分けに飲むほうが体の吸収は良くなります。
1日8回を目安に、起床時や服薬時などタイミングを決めて、こまめに水分補給するようにしましょう。
経口補水液を備えておくのもおすすめです。
経口補水液には塩分と糖分が含まれており、
脱水時に不足する水分と電解質を素早く体内に吸収させることができます。
スポーツドリンクには塩分が含まれていませんが、通常の水分補給には十分です。
水に溶かす粉末タイプも販売されているので、非常用に備えておきましょう。
正しい水分補給ができておれば、体内のバランスを保つことができます。
そして血行不良の予防や、エコノミークラス症候群予防にもつながります。
日頃の健康な体づくり習慣や知識で、
災害関連死という悲しい死を防ぐことができるのです。
引き続き、高齢者の災害時の健康について理解を深めていきましょう。