Lesson10-3 高齢者と防災③

避難生活でも健康を保つには

そもそも災害時には、体調不良に陥りやすい条件が揃っています。
例えば、

  • 栄養のある食事が取れない
  • 水分不足
  • 運動不足
  • ストレス、不安
  • お風呂に入れない(体が温まらない)
  • トイレに行きづらい

などが挙げられます。

高齢者が避難生活の中でも健康を維持するには、どのような点に配慮が必要なのでしょうか。

口腔内を清潔に

口の中を健康な状態に保つことは、高齢者であればとても重要になってきます。

日本人の死因で上位3位内に肺炎があります。
高齢者に多い肺炎は、誤嚥をきっかけに体内に細菌が侵入することで起こる、
誤嚥性肺炎約70%を占めます。

高齢者は免疫力の低下により、肺炎のリスクが高いとされています。
肺炎が持病をさらに悪化させてしまったり、その他の病気へ繋がる危険性もあるのです。

災害時は通常よりもさらに免疫力が落ちているため、
口腔内を清潔にすることで、あらゆる細菌の繁殖を抑制することが大切です。

被災後でも必ず歯磨きをして、細菌が体内に侵入するのを予防しましょう。

とはいえ、避難生活で十分な水が手に入るとは限りません。
以下の方法であれば、少ない水で歯を磨くことができます。

  1. 約30mlの水で歯ブラシを湿らせる
  2. 歯を磨く
  3. ティッシュで歯ブラシの汚れを拭き取る
  4. 1〜3を繰り返す
  5. コップの水で小分けに口を数回すすぐ

歯ブラシがなければハンカチなどで拭くだけでも清潔を保つことができます。

入れ歯の方は、専用の洗浄剤の備えをしておきましょう。
手に入らない場合は除菌ティッシュで代用することも可能です。

こまめに水分補給をすることも、口の中の乾燥を防ぎ、菌の繁殖を抑える効果があります。

そして、誤嚥することのないよう、
いつもと違う場所での食事でも、しっかり咀嚼して飲み込むことを意識しましょう。

トイレの重要性

衛生環境は健康に大きな影響を与えます。

シニア世代の人々は排泄を控えることで、様々な体調不良につながりやすいのです。

しかし、災害時には、節水のためにトイレに行く回数を減らしたり、
共用のトイレが不衛生であることから、トイレに行くことを拒むようになってしまう人が多くいます。

トイレに行かなくて済むように、食事や水分補給を控えてしまう。
そうすると体内に水分や塩分が不足し、脱水を招く。

それが体調不良を引き起こすことは、前ページでも勉強しましたね。

実際に東日本大震災では、自宅トイレが使えるようになるまで1週間以上を要した家庭もあります。

飲み水の確保と同じくらい、排水用の水も大切なのです。
避難所でもすぐに仮設トイレが設置されるとは限りません。

水が無くても使用可能な簡易トイレを備えておくといいでしょう。

不潔なトイレは細菌が繁殖し、いろいろな感染症も心配です。
臭いや汚れが気になる状況では、精神的にも負担がかかります。

特に避難所などで大勢の人と共用する場合には、
一人ひとりが使用時のマナーを守る心がけも大切ですね。

「被災直後だから」と、人間にとって欠かせない排泄を避けるのではなく、
避けなくて済むように日頃から準備をしておきましょう。

健康習慣が防災に繋がる

日々健康でいることが、非常事態の中でも耐え切れる体を作ります。

健康寿命という言葉を聞いたことがありますか?

これは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。

日本は平均寿命と健康寿命の差が男女とも概ね10年ほどあります。
何かしら体調に問題がある状態が10年ほどあることを意味しています。

せっかく命があっても健康でなければ愉しみにも制限が出てくるかもしれません。

災害時に避難したり、避難生活を生き延びることも難しくなってくるでしょう。
過酷な避難所生活では、些細なことがきっかけで病気に発展してしまうのです。

筋肉は加齢とともに衰えていきますが、何歳からでも鍛えることができます
以下のような運動は簡単に取り組めるので是非習慣にしていきましょう。

  • 1日合計30分のウォーキング
  • 体幹を鍛えるスクワット
  • 肉、魚、卵、大豆などたんぱく質を積極的に摂る

飲酒や喫煙といった嗜好品を控えることも、健康習慣と言えますね。

体と心が元気で健康であること、それが防災に繋がるなら、
一石二鳥以上の価値があるのではないでしょうか。


高齢者の場合、防災とその後の健康維持に対する備えも重要ということが理解できましたか?

さて、次のセクションでは、非常食について詳しく見ていきましょう。